新型コロナウイルス感染症の拡大による影響が全世界で広がり、日本においても多大な影響を受けているなか、不動産市場ではコロナショックがどのように影響を及ぼすのか、今後を予想してみたいと思います。

新型コロナウィルスが不動産市場に与える影響

市場別で影響をチェックします。

「個人の住宅売買市場」

景気が悪化すると、失業等で個人所得が減りマイホームのような個人向け住宅の購買力は下がり不動産価格は下がっていくことが基本です。なので、今後は恐らく新築分譲マンションのような物件の価格が下がり、その後これに連動して中古住宅価格も下がっていくことが考えられます。ですがプラスの要因もあります。テレワークの普及で郊外戸建を購入するというニーズも増えつつあるようで、こうした需要が伸びてくると不動産価格の下落は起こらずに済むかもしれません。但し今後更なる経済の悪化により企業が給与を支払えない、又は金利が上昇した等の影響で住宅ローンの返済ができない人が増え自宅売却件数が増加した場合は、個人住宅系の不動産価格は下落に向かうことが想定されます。

「賃貸住宅市場」

賃貸住宅事情においては転勤等に伴う移動は減ったものの現時点では賃料下落が起きているわけではありません。家賃が下がっていないということは住居系投資不動産においても直ぐに値下がりはしないと想定されます。但し今後更なる経済の悪化により企業が給与を支払えない、就職できずに収入がなくなった等で賃借人が家賃支払いを滞り始めたときは住宅系の投資不動産価値が落ち価格も下落に向かうことが想定されます。

リーマンショック時との違い

リーマンショックは、リーマン・ブラザーズが経営破たんしたことをきっかけに生じた不況です。先に金融機関がダメージを受けたことで融資姿勢が厳しくなり、市場お金が出回らなくなり、実体経済まで悪くなっていった経緯があります。 一方で、今回のコロナウイルスは先に実体経済への悪影響は出ているものの、現時点でまだ金融機関の融資姿勢が悪くなるといった状況にはありません。むしろ、金融機関が中小企業に対して積極的に助け船を出している状況にあるくらいです。 そのため、リーマンショック時のように「お金が借りられない」という状況ではなく、借りようと思えば融資は受けられる状況にあるという状況です。

「個人の住居の売買」

リーマンショック当時を振り返ると、それまでの新築マンション業界は、供給戸数を増やすことを重視する企業が多く、首都圏一円の郊外まで数百戸規模の大型マンションが次々建設されていました。しかし、リーマンショックによって業績悪化に見舞われた多くの企業でリストラが行われ、マンション購入どころではなくなった状況でした。その結果、マンション需要が一気に減退し、多数の売れ残り在庫を抱えて窮地に立たされたデベロッパーでは、在庫の現金化を急ぐため一部で大幅な値下げ販売が行われました。そうした事情が当時の平均価格を押し下げる要因でした。この様にリーマンション時は需要急減で販売が立ち行かなくなった物件群が値下げ販売によって平均価格を押し下げであったのに対して、今は量より質にデペロッパーが変わっている点、テレワークによって郊外戸建ニーズ等の高まりがある点、低金利で住宅ローンが借りられるといった点で価格が下落しないプラス要因があり直ぐに住宅系の不動産市場価値が下がるとは想定されにくいです。

「賃貸住宅市場」

収益物件の価格を決定する利回りは、金利と連動して動くのが特徴です。リーマンショック当時は金融機関が投資家に融資をしなくなった結果、不動産の購入者が激減し収益物件の価格も下落していきました。昨今は、マイナス金利の導入によって金利は低いままとなっており収益物件の価格は上がっている状況にあります(低金利のときは高くなります)。コロナウイルスの影響により、今後、金利を上げる政策を取ることは考えにくく、低金利の状態はさらに続くものと予想されるのです。住居系の投資用不動産の価格はすぐには値下がりしにくいものと想定されます。ただし、景気悪化が長引けば、不動産投資そのものが下火となり賃貸不動産の価格も下がっていくと想定されます。

不動産の売り時、買い時はいつ?

売り時と買い時は個人住宅用、投資目的用、投資目的の中でも住居系投資物件とテナント系投資物件によって様々です。個人住宅用は、「上がっているから買わない」「下がっているから買う」といった判断をしているケースはそもそも少ないです。市場動向に大きく左右されるより、あくまで自身や家族の生活イベントに合わせて売る、支払いに無理がなければ買う、といったタイミングをこれまで通リ重要にしていれば良いと考えられます。下がって買いたいという方は、現時点で価格が上がる要素は考えにくいため(むしろ政府の救済が薄ければ住宅ローンが払えないなく自宅を売りに出す方が増え買い手市場がくる可能性がある)急いで購入を考えていなければもう少し市場の様子を見ておいてもいいかもしれません、売却をお考えの方であれば今は売時の可能性は高いです。

住居系投資物件であれば、現時点では家賃の下落は起こっていないし、低金利がまだ続く見込みを考えると購入してもいいかもしれません(ただ昨今は物件価格は高い状況です)。但し、今後の景気の悪化により賃借人の家賃未払いが起こっきたら運営が成り立たなくなりますので注意が必要です。逆にこういうリスクを回避したい貸主、借入が多く返済負担が大きい貸主は現時点で売っておいた方が良いかもしれませんね。

テナント投資物件用を考えている方は、空室が増えた物件であれば安く買えますので買い時と言えますが、テナントが決まらない、賃料相場が下がるといったことも考える必要があり博打性が高い状況と考えられます。コロナ以前に戻ると判断される方は買い時と想定されます。貸主はとても厳しい状況です。借り入れが大きく返済が多い場合は売っておくことがいいかもしれませんね。

まとめ

以上、不動産市場についてざっと影響を考えてみましたが、不動産価格が直ぐに急激に変わることは考えにくそうです。これまでは商業地(テナント投資用物件)が不動産価値を押し上げてきた一因でしたが、現在はその逆で住宅系が下支えをしているかもしれません。但しテナント投資物件のように不動産市場に与える影響力が住宅系にあるかは疑問ですし、企業の衰退撤退は不動産市場に大きな影響を及ぼします。正直価格が下がっていく要因が多いと思いますが、結局すべては今後のコロナ騒動が、いつ、どの程度で終息し皆さんの不動産に対するマインドがどうなるかになります。比較的短期で終息するなら、以前と近い状態に戻る可能性が残り、長期化するようなら下落することとなるでしょう。

最後に、投資用不動産市場においては大きな融資を用いて物件を所有しているオーナーは、可能な限り早期に売却したほうが良い状況がくるかもしれません。一方で、これから新規取得したい投資家にとっては、購入しやすい価格へとなっていきます。しかし、投資用不動産には融資姿勢が厳しくなる予測があり、現金を多く持っている投資家にとって有利な状況となり、融資を用いるスタイルのサラリーマン投資家にとっては、手を出しにくい状況となってくるでしょう。